佐賀県の山天山 |
佐賀県の天山は以前から行きたい山の一つであった。95年の山渓の特集記事で「ふるさとの山自慢」というものがあり、都道府県ごとにアンケートをした結果、佐賀県では天山が選ばれていたからである。福岡に住んでいた頃は、天山という名前だけは聞いたことがあった。しかし登ったことはなかった。最近では、朝日新聞の日曜版に、天山での殺人事件をモチーフにした石川達三の『青春の蹉跌』が紹介されていて、それを読んでみたりもした。この小説自体は天山ではなく、箱根の山が事件の場として登場する。
帰省で福岡へ帰ったついでに課題となっていた天山に登ることにした。車がなければ不便な山であるが、横浜から車で帰ってきていたので、かなり楽な登山となる。カーナビがあるとはいえ、天山の登山口は分かりづらく、事前に本屋でガイドブックを立ち読みし、林道の入り口と駐車場の位置を頭に入れた。 山行前夜は雨が降り続いたが、予報通り朝には止んでいた。しかし、三ツ瀬トンネルを抜けるとガスの中であった。佐賀市に向かって南下し長崎自動車道に沿った一般道を西に行く。そして小城羊羹で名高い小城町の晴気から北上し林道を登っていく。林道といっても道は最後まで舗装されている。林道の途中にはぽつんと小さな集落があったが、いったい何を生業としているのだろうか。狭い道がいくつか分岐して道がわかりにくいが、天山方向を示す小さな標識はあるので、それに従い登っていく。 初めて走る林道は長く感じ、ようやく駐車場に到着する。林道自体はまだ先の伸びている。駐車場はガスの中で視界は10mほどしかない。広めの駐車場は他に車は止まっていない。雨こそ降っていないが、ガスで視界が悪い中、出発する。 【天山登山口】 九州自然歩道天山登山口と大きく書かれた案内板の前を通り天山山頂へ向かう。 駐車場のすぐ先に天山上宮がある。背の低い鳥居の先に寄り道し、祠のある方へ行く。祠の周りには新しい花が生けられている。霧がかかり薄暗いので不気味な雰囲気だ。上宮のいわれを説明するような掲示もなく、自然歩道へ引き返した。 【天山上宮の鳥居】 上宮は天山の八合目に当たる。 天山山頂まで1.1kmの指導標。登山道というよりしっかり整備された遊歩道を歩くと10分ほどで四辻に出る。右手の山頂方面へ向かう。さらに10分弱で広い山頂に到着する。登っている間は無風だったが、山頂は風が強く吹き飛ばされそうである。山頂にいくつかあるポイントをチェックする。 【天山頂上】 標高1046m。南朝の武将、阿蘇惟直の墓碑がある。晴れれば、北は背振連山、南は阿蘇、九重、有明海、多良岳、経ヶ岳、雲仙が一望できるはずだ。 まずは一等三角点をチェック。天山の山頂は、佐賀市、唐津市、小城市、多久市の接点にあり、佐賀県のへそといえる。眺望もよく、一等三角点にふさわしい場所である。また阿蘇惟直の墓碑があるが、時代は14世紀にさかのぼる。足利尊氏が新田義貞の朝廷軍に敗れ九州に敗走したが、これを迎え撃とうとした阿蘇惟直が味方の裏切りにもあい、討死寸前のところをかろうじて戦線離脱。しかし、三瀬峠を越え天山山麓まで来たところで敵の待ち伏せに遭い、一族皆自害したという。 結局人とは会うこと無く下山する。いつかまた晴れた日に訪れたいものだ。 Camera:Panasonic DMC-FX9
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